猫の健康飼育ハンドブック WEB版

呼吸が荒い

猫伝染性腹膜炎(FIP)

猫コロナウイルスによって引き起こされる、致死的な感染症です。猫の腸には病気を引き起こさない猫腸コロナウイルスが存在し、これが突然変異を起こすことで猫伝染性腹膜炎ウイルスに変わると考えられています。多頭飼育で発生頻度が高いこと、純血種の猫で感染しやすいことがわかっており、糞便や唾液から感染すると考えられていますが、詳細な感染経路や突然変異を起こす原因は明らかではありません。発熱、元気消失、食欲低下といった症状があり、腹水や胸水が溜まるタイプ(ウェットタイプ)と眼や神経に異常が出たり、肝臓や腎臓に肉芽腫と呼ばれるしこりを作ったりするタイプ(ドライタイプ)が存在します。胸水が溜まると呼吸が苦しくなります。現時点では、治療法・予防法ともに確立されておらず、発症すると数週間~数ヶ月で死に至ります。

猫喘息

人と同様に猫にも喘息があります。さまざまなアレルゲン(タバコの煙、花粉、ハウスダストマイトなど)を吸引することで、気管支の炎症や気道の閉塞が引き起こされます。症状としては咳や呼吸困難、喘鳴(喉がゼエゼエ鳴ること)が認められます。猫では飲水や興奮などが引き金となって、逆くしゃみと呼ばれる症状が認められることがあります。くしゃみと咳、逆くしゃみは時に区別するのが困難です。空気清浄機による環境改善やステロイド剤などを用いて治療しますが、慢性化すると治療が難しくなるため、早期の対応が勧められます

心筋症

心筋症とは心臓を構成している筋肉が変質し、正常な収縮が行えなく疾患です。肥大型心筋症、拡張型心筋症、拘束型心筋症などが存在します。このうち、猫では肥大型と拘束型が多いとされています。いずれの型でも、心臓がうまく収縮できず、心臓から全身へ血液を送り出す機能に異常をきたし、さまざまな症状が現れます。肺に水がたまったり、胸水が溜まると呼吸困難が認められます。また、血栓ができやすくなり、特に後ろ足につながる血管で血栓が閉塞すると麻痺が認められます。心筋そのものを治療することはできず、心臓の働きを補助するような薬剤を使用します。

甲状腺機能亢進症

首の部分、気管の横に甲状腺と呼ばれる器官があり、甲状腺ホルモンが分泌され体の代謝を上げ、活性化する作用を担っています。なんらかの原因でこの甲状腺ホルモンが過剰になることが甲状腺機能亢進症です。人のバセドウ病と少し違いはありますが、病気としては類似しています。原因として、日本では甲状腺の腫瘍が多いと言われており、そのため発症は高齢になってからのことがほとんどです。良性と悪性の腫瘍が混在していますが、腫瘍の転移よりもホルモン過剰が問題となります。症状としては活動性の増加、攻撃性の増加、過食、水をたくさん飲む、食べるのに痩せる、毛がパサパサになる、などがあります。吐き気や下痢が見られることもあります。また、猫は通常犬のように口を開けてあえぐことはほとんどありませんが、甲状腺機能亢進症の猫ではしばしばこの症状があります。一般に高齢猫は寝ている時間が増えますが、妙に活動的で動き回るようになった、おとなしかったのに威嚇したり攻撃してくるようになった、などから気づかれることも多いようです。治療としては薬でホルモンを抑えたり、手術で甲状腺を摘出したりします。

リンパ腫

リンパ腫は猫で最も多い悪性腫瘍とされています。リンパ腫は全身様々な部位に発生しますが、最も多いのが胃や小腸、大腸といった消化管とされています。また、胸の中の心臓の前あたりにしこりを作る縦隔型、鼻にしこりを作る鼻腔型などが比較的多く認められます。血管やリンパ管の中に存在するリンパ球と呼ばれる白血球の一種が腫瘍化したもので、白血病に近い病気です。そのため、しこりを作っている場合でもそこだけの問題ではなく、全身に広がっていると考えられます。したがって、治療には主に抗がん剤が用いられます。症状は発生部位によって様々で、消化器型では嘔吐や下痢、体重減少が認められます。縦隔型では胸水が溜まることが多く、呼吸が苦しくなります。鼻腔型ではくしゃみや鼻水、鼻出血が一般的です。リンパ腫は8歳以上で多くなるとされていますが、2~3歳くらいで発症することもあります。縦隔型は猫白血病ウイルスに関連したものがほとんどで、若い年齢での発生が多いとされています。猫免疫不全ウイルスは猫白血病ウイルスほど直接的ではありませんが、リンパ腫の発生率を高めるとされています。

症状別猫の病気検索

  1. 吐く
  2. 下痢
  3. おしっこが出ない、少ない
  4. 咳、くしゃみ
  5. よだれが多い
  6. 呼吸が荒い
  7. 水をたくさん飲む、おしっこが多い
  8. 元気、食欲がない
  9. その他