『海鳥の楽園』天売島
天売島は、北海道北西部の日本海に浮かぶ人口約330人の小さな島。島の西側の断崖部には、春から夏にかけて絶滅危惧種のウミガラス(オロロン鳥)やケイマフリなど、8種類約100万羽の海鳥が繁殖のためにやってきます。 この貴重な海鳥の生息環境を保護するために、海鳥繁殖地は天然記念物や国定公園、鳥獣保護区などに指定されています。 しかし近年、いくつかの海鳥ではその生息数が減少しています。 その要因の一つとして考えられているのが、島で増えてしまった野良猫です。
- 海鳥が減少する原因はネコ以外にもハシブトガラスなどの捕食者の増加、餌資源の減少など様々あります。
- ウミネコやウトウなど、ノラネコが近づきやすいところで繁殖を行う種類の海鳥が特にノラネコの影響を受けやすいと考えています。
ウミガラスは崖の上で繁殖を行うためノラネコが近づくのは難しく、現時点では影響を受けていないと考えています。
ウトウを襲うノラネコ
提供:国立極地研究所 伊藤元裕氏
提供:国立極地研究所 伊藤元裕氏
また、増加したノラネコは家への侵入やふん尿、庭を荒らすほか、水揚げした魚を横取りするなど住民生活に影響を与えるほか、冬の寒さの厳しい天売島は、ノラネコ自身にとっても住みやすい環境とは言えません。
そのため、環境省、羽幌町、 北海道、北海道獣医師会と猫の保護団体が手を組み、「人と海鳥と猫が共生する天売島」連絡協議会を発足し、猫を保護し*馴化(じゅんか)させてから里親を探す活動を行っています。
天売島野良猫対策 過去の取組み経緯
1992~96年 | 野良猫の避妊去勢手術(5年間で212匹を避妊去勢) |
1995年 | 海鳥繁殖地に電気柵を設置 |
2010年 | 野良猫に関する島民アンケートの実施 |
2011年 | 住民説明会の開催 |
2012年 | 天売島ネコ飼養条例の制定 (飼い猫の登録制、野良猫へのみだりな餌やりの禁止など) |
2012年 | 野良猫の馴化実験 |
2014年 | 本格的な野良猫の捕獲開始、馴化済ネコの譲渡開始 |
具体的な天売島の野良猫対策
①天売島ネコ飼養条例の制定
2012年(平成24年)、羽幌町は飼い猫の適正飼養を図るため、「天売島ネコ飼養条例」を施行しました。
(条例の目的)
・ネコの健康と安全の保持
・海鳥繁殖地の保護
・住民の生活環境の保護
・海鳥繁殖地の保護
・住民の生活環境の保護
(条例の概要)
・飼い猫の登録(マイクロチップの挿入)
・室内飼養の奨励
・避妊去勢手術の実施(室外飼養の場合)
・野良猫へのみだりなエサやりの禁止
・室内飼養の奨励
・避妊去勢手術の実施(室外飼養の場合)
・野良猫へのみだりなエサやりの禁止
この結果現在のところ、島内で約30匹の飼い猫が登録されています。
②海鳥繁殖地および市街地の野良猫対策
2014年秋から海鳥繁殖地および市街地の野良猫対策を行っています。具体的な対策の流れは以下のようになります。
(1)捕獲作業
繁殖地や市街地に箱わなを設置し、野良猫の捕獲を行います。捕獲作業は主に天売島のまちづくり団体が行っています。
(2)搬送
捕獲された野良猫はフェリーで羽幌町内に移動し、北海道海鳥センターで一時待機した後、協力いただける動物病院に搬送します。
(3)医療行為
(5)譲渡
(1)捕獲作業
繁殖地や市街地に箱わなを設置し、野良猫の捕獲を行います。捕獲作業は主に天売島のまちづくり団体が行っています。
捕獲された野良猫はフェリーで羽幌町内に移動し、北海道海鳥センターで一時待機した後、協力いただける動物病院に搬送します。
動物病院でマイクロチップの装着、避妊去勢、ワクチン接種、駆虫、血液検査などを行ないます。
(4)馴化作業
医療行為を終えた野良猫はまだ人に慣れていない場合がほとんどであり、人に慣らすための馴化作業を行います。馴化作業はエサやりやトイレの掃除などの通常の世話の他に、積極的に猫とコミュニケーションをとることで徐々に人に慣らし、飼い主に譲渡できるようにします。馴化作業は北海道海鳥センターや動物愛護団体の施設などの他、自宅などで天売猫を預かる「預かりボランティア」などによって行われます。
人に慣れた天売猫は定期的に行われる譲渡会などで飼い主を探し、譲渡します。
このような取り組みの結果、平成27年11月現在で、133匹の野良猫を捕獲し、うち約100匹を島外搬出し、約60匹が飼い主に譲渡されています。